病棟コンサート
2019年9月25日 発表
東京大学医学部附属病院(東京,本郷)の精神科病棟で精神科の入院患者の方々を対象に音楽コンサートを開催しました。芸術の医療のなかでの役割を考察・実践するための取り組みの一つです。精神科の先生方,看護師の方々をはじめ,お忙しい中開催に多大なご協力をいただいたすべての方々に深く感謝いたします。
東大病院だよりに取り上げられました!
メンバーによるレポート
"その問いは「なぜ生きるのか」にも似ていると思います"
東京大学医学部附属病院精神神経科のご協力の元、入院患者さんに向け、歌とピアノのコンサートを行いました。
コンサート開催に際し、病院側のご厚意により事前に病棟見学をさせていただきました。皆若干緊張の面持ちでしたが、病棟内はとても明るく、先生方・スタッフの皆様のあたたかな空気により、一瞬にして心地よい空間へと変わっていきました。その日はあいにくの雨模様でしたが、見学の最中、突如病棟の大きな窓に一際綺麗な虹が架かりました。一同、思わず歓声をあげたほど、見事な美しい虹でした。まるでコンサートの前途を祝福してくれたかのようなその虹と、お忙しい中見学の機会をくださった病院の皆様に感謝を込めて、「レインボーコンサート」と名付けました。
ソプラノ1名・バリトン1名・ピアノ3名、計5名の演奏者が決まり、曲決め・練習を行いました。東大医学部と藝大のメンバーが何度も集まり、それぞれの知恵と経験を生かしながら、どんな空間を作り上げたいか、何を目的とし届けていきたいか、気負いすぎず、しかしとても丁寧に話し合い、作り上げていきました。プログラムは、親しみやすい曲から本格的なクラシックまで内容は多岐に渡り、コンサートを作り上げる時間は難しくも大変楽しいひと時でした。
いよいよ当日。ロビーには山田耕筰先生が寄贈された歴史あるスタインベルク製のアップライトピアノがありました。スタッフの皆様がお忙しい中ご用意くださり、きちんと調律された歴史あるピアノは、一音鳴らしただけでも、どこか特別な響きに感じられました。
本番、想像していたよりずっと多くの患者さん、ご家族の方、たくさんの病院スタッフの方々がいらしてくださいました。AMSSのメンバーも続々と集まり、最後は“世界に一つだけの花“を会場全員で歌いました。
病棟全体が大変あたたかな雰囲気に包まれたのを感じました。
音楽をするとは何か、なぜするのか。
その問いは、「なぜ生きるのか」それにも似ている気がします。
でも、もしかするとそこに明確な答えは必要ないのかもしれません。
あの日、あのあたたかな空間には、確かにそこにいた全員が放つ人間のパワーに満ちていました。
―もしも、音楽や芸術が、その日一日を生き抜く力に成り得るのであれば。
それを希望に、それを信じ、今後もコンサートやワークショップ等を通じ、医学と芸術、そして人間の底知れぬ可能性に迫っていこうと思います。
東京藝術大学 ピアノ 若桑茉佑