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AMSS Memoirs

2020. 4. 25 

人類の歴史をゲノムで探る

我々人類はどこから来たのか―私たちの過去を知ろうとした時にその頼りになるのが私たちの先祖が残したDNAであるという発見は、ここ数十年で人類学・考古学・生物学が明らかにしてきたことです。本稿では、こうした「人類の歴史の研究の歴史」についてその重要な対立やいくつもの革新に焦点を当て振り返るとともに、壮大な研究史から我々への教訓を導くことを目標とします。

​歴

       史とは,星の光である,私の高校の世界史の先生がこう言い切った時,その先生は,過去の姿を我々に見せ

       る星の光を学べば,海のなかをさまよう我々の進路を示してくれるに違いない,というひどく教訓的な内容

       をそれを上回る可憐な言葉に詰め込んでいた。当時歴史にさしたる興味もなかった私は,そのあとに渡された百にも及ぶ読むべき参考図書のリストをどこかへやってしまったが(悔やまれることだ!),たしかに先生の言うとおりだと,問題を解くという非常に狭い意味においてのみ納得していたのを覚えている。

しかし,歴史を学ぶことが重要であったとしても,歴史を学ぶことが容易であるとは限らない。星の光が見えたとしても,その星が宇宙のどこにあるのか,いつから存在するのか,いつ消えるのか,なといったすぐにも思いつきそうな疑問に答えるのは極めて難しい。人類の歴史は二度と繰り返せない一度限りの出来事であるし,終わった途端にその痕跡は時間とともに劣化してしまう。その意味でそもそも歴史を研究すること自体がはじめから大きな難題をかかえている。

したがって,その研究の中では数多くの誤りや対立が起きていたのは不思議ではないかもしれない。ここでは我々ホモ・サピエンスが,どのように現在の我々に至ったのかのゲノムによる研究を,いくつかの対立・問題提起,そしてその克服に焦点を当てながら,そうした研究がいかにその立ち向かう難題を明らかにしようとしてきたかを概観したい。そのあと,そうした人類の歴史の研究の歴史から何を学ぶことができるか,そうした教訓を私たちの活動にもどう活かせるかを考察する。しばらくは先の格言に頼ってみようと思う。

 

初期の対立

現生人類(ホモ・サピエンス)の起源について,その場所が当初から大きな対立があった(1)。すなわち,多地域進化説と,アフリカ単一起源説である。多地域進化説によれば,世界の各地でホモ・エレクトゥスがその集団間での何らかの遺伝子のやり取り(遺伝的流動),選択,また特定の遺伝子の割合が偶然変化する(遺伝的浮動)ことで次第に現在のホモ・サピエンスが生まれたとする。一方で,アフリカ単一起源説では,すでに現在のような身体的特徴を持ち合わせるホモ・サピエンスがアフリカで出現し,それが世界各地へ移動・拡散していったという説である(1)。すでに数多くの現代人や古代人類のゲノム解析から多地域で同時にホモ・サピエンスへ進化したという説は棄却され,アフリカが現生人類の起源であることが支持されているが(2),そうした合意に至るまでは非常に多くの紆余曲折があったようである(図を参照)。

20200425執筆ゲノム人類Timeline.jpg

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ミトコンドリア・イブ

1987年1月1日,英科学誌ネイチャーに出版された1本の論文(3)は,それが提唱する説がにわかに宗教的な含みをそえられて大きな話題となったらしい。現生人類はすべてアフリカのある一人の女性に由来するー「ミトコンドリア・イブ」説である。カルフォルニア大学バークレー校生化学教室のレベッカ・キャンら,アラン・ウィルソンのグループが世界各地の147人のミトコンドリアDNA (mitochondrial DNA; mtDNA)を解析すると133のタイプに分けることができた。そこからそれらのmtDNAの系統樹をつくることで,14–29万年前のアフリカの1人の女性が今あるすべてのmtDNAの起源である,とした(3)。MtDNAは母親からしか遺伝しないので,mtDNAの祖先はすなわち我々の母方の祖先,ということである。このことは同じ号の「エデンの園より(Out of the garden of Eden)」という解説記事で聖書と関連づけられ,その女性は「ミトコンドリア・イブ」と表現された(4)。これはいくつかの誤解を招きかねない表現だった。論文自体の真偽に立ち入らず,結果のみを解釈するだけでも,たとえば,

 

  • 14–29万年前のアフリカには1人の女性しかいなかったわけではなく,ほかにも現代の"すべての"人類には遺伝的に寄与することにならなかった数多くの女性がいた(だろう)

  • ミトコンドリアのDNAは母系遺伝(子供は基本的にはmtDNAを母親のみから受け継ぎ,父親からは受け継がない)である。したがって,あくまで母系のみがその女性にたどれるのみであって,男系については何もわからないので,現生人類全ての起源ではない

  • その「イブ」から人類が始まったのではなく,その前にも人類は存在した

などといったことは言える。しかし想像に難くないようにその後数多くの一見似たような―しかし科学的には誤った―報道が数多くなされたようだ(5)。

一方で,この論文が巻き起こした議論はその結果の解釈のみならず,その研究内容そのものに対してでもあった(5)。たとえば,

 

  1. コンドリアのDNAのゲノムを直接よみ,比較したわけではなかく,制限酵素をもちいた解析で「間接的に」解析した(6)

  2. アフリカ人とカウントしていた20人のうち,18人はアフリカ系アメリカ人だった(7)

  3. 共通祖先の場所をアフリカとするのに十分な証拠を提示していなかった(8)

  4. MtDNAの変異のスピードの根拠が十分でなかった

 

などがそうした科学的手法そのものに対して指摘された問題点だった(9)。

こうした指摘を受けて,2年後の1991年,同じグループが再びほぼ同じ結論—およそ20万年前のアフリカに,我々の母系の共通祖先がいた―を主張する論文をサイエンス誌に発表した(9)。今度は121人のネイティブのアフリカ人を含む189人からmtDNAを解析し,その変異が入りやすく差を検出しやすい部分を"直接"読み取った。さらに,系統樹を作成するのも最大節約法というプログラム(10)を採用し,信憑性を高めた,というわけだ。最後の結論部に書かれた一文が奮っている;

                      In conclusion, our study provides the strongest support yet for the placement of our common

                               mtDNA ancestor in Africa some 200,000 years ago. (9)    

                               結論として,今回の研究で,我々のmtDNAの共通祖先がおよそ200,000年前のアフリカに

                               いたことを支持するこれまででもっと強い証拠を得た。

 

しかしこの結果ですら科学者を納得させるのは難しかった。というのも,系統樹の構築に用いられた最大節約法では,その分岐は一つには定まらなので,何回もプログラムをまわしてそのうち「もっともらしい」ものを根拠とともに提示せねばならない。しかし,それがなかった。論文では,1回プログラムを回して得られた100の系統樹から,アフリカが起源である,と推定した:

                               The program found 100 trees with a minimal length of 528 steps; there are many more

                               (perhaps thousands) of trees of this length, and there could be shorter trees. (9)

                               プログラムを回すと,分岐が 528 ステップで最小となるような 100 の系統樹が見つかった。

                               これと同じ長さの分岐となるような系統樹はもっと多く(おそらく数千は)あるし,もっと短い

                                のもあるだろう。

その 100 の系統樹すべてでアフリカの起源が示されていた,かくしてかの結論,という論理だった。実際,彼らが予想していたよ うに,もっと短い(簡潔に説明できる)系統樹は見つかり,さらに悪いことにはそのほとんどがアフリカの起源を示唆していなかったことがわかった(11)。このような反論は他にも多くの支持があった(12-14)。

 

このような論争はありはしたものの,唯一彼らの結論で揺るがなかったものは,解析されたアフリカの mtDNA は,他の地域のそれに 比べてその変異の多様性が明らかに大きかったことだった。変異の多様性が大きい,ということは,そうした数多くの変異が蓄積するだけ人類が長くその場所に住んでいた,ということを意味する。結局,その後の再検証(15)や,多くの考古学・ゲノム研究でアフリカ単一起源説や,さらにはそのおおまかな年代まで正しかったことがわかり,これらの研究はミトコンドリアDNAを用いた人類の起源を探る最初の証拠を提示した論文として多く引用されている(たとえば,参考文献 2,16,17)。

新たな発想の起源

なぜこのような大きな議論に至ったのだろうか(18)。一つには,今見たように,論文の筆者らが根拠の十分な実験・解析手法を用いなかった,もしくは提示しなかったから。何を持ってして十分かは時と場合によるし,ある程度当事者の倫理・研究観にもよるかもしれないが,あらかじめ改善すべき余地は多分にあったかもしれない。二つには,その結果・解釈の目新しさや重大さゆえ。ホモ・サピエンスが世界のどこで出現したのかという議論の終わりの始まりを告げただけでなく,しばしば「ミトコンドリアDNAの母系の祖先」が「人類の唯一の共通祖先」と誤解され,社会的・宗教的な意味合い持ってしまった。そして三つ目に,目新しく,科学的に議論をおこしたのは,ミトコンドリアDNAを我々人類の系統樹の構築に用いる,という新たな,しかし注意を要する発想をはじめて本格的に採用していたからだ。

それぞれについて考察を深めることはできるが,ここでは最後の問題にしぼろうと思う:なぜ,そもそもウィルソンらはそうした新たな発想に至り,ミトコンドリアDNAをもちいてそれを代々母親から受け継ぐ人類の起源を探ろうとしたのだろうか。

 

実のところ,mtDNAを解析し,人類の起源を探ろうとしたのは,1987年の論文が最初ではなかった。同じカリフォルニア大学バークレー校生化学教室のウェズリー・ブラウンが1980年に「制限酵素解析で明らかになったヒトのミトコンドリアDNAの多型 (Polymorphism in mitochondrial DNA of humans as revealed by restriction endonuclease analysis)」といういかにも「科学的」なタイトルの論文がそれである(19)。議論を巻き起こした1987年のキャンらの「ミトコンドリアDNAとヒトの進化 (Mitochondrial DNA and human evolution)」という大掛かりなタイトルとは大きく異なるものだ。しかし,ブラウンがその1980年の論文で用いた手法はキャンらの論文やその後の研究の基礎となるものだった。つまり,この論文でブラウンは,21人からmtDNAを集め,制限酵素を用いて解析し(詳細は注6を参照),その21人の母系の共通祖先は18–36万年前だろう,そしてその頃に人類の人口の減少(ボトルネック)が起こっていただろうと推測した―キャンらは明らかにこの手法をもとにしていた(3)。MtDNAの起源の場所を割り出すことが目的でもなかったし,そのための厄介な議論の種となる系統樹作成をしていなかったこともあり,大きな議論にはならなかったのだろう。

でもそもそもこの研究を皮切りにはじまったmtDNAによる人類史の研究がなぜ可能だったかというと,mtDNAのたとえば以下のような性質があったからだった(3,9,19,20):

 

  1. MtDNAは基本的に母親のみから遺伝する母系遺伝なので(21),組み換えなどによる変異が起こりにくく(22),またmtDNAの共通祖先はそのままヒトの母系の共通祖先になる

  2. 変異率が核に存在するDNAより速く一定で(およそ5–10倍程度),比較的最近からの進化的分岐も,その変異に痕跡を残しやすい(23)

  3. 細胞あたりのDNAのコピー数が核DNA(1コピー)よりもはるかに多く(組織によりおよそ数千コピ〜)(24),抽出が比較的容易で,古いサンプルでも解析に耐えうるDNAが残っている可能性が高い

  4. 16,500塩基程度と短く(23),また変異の入りやすい箇所もわかってきていたため(25-26),長い塩基対を読む技術がなくてもその変異を知ることができやすい

 

細胞内のエネルギー産生を担う場所であるミトコンドリアにも独自のDNAが存在することが1963–64年に示されて以来(27,28),こうしたmtDNAに関する数多くの性質が明らかになっていた(29)。上記の性質が意味するところは,基本的に同じものが複製されて他の遺伝子との組み換えを起こさないのだから(性質1),解析のしやすい突然変異による変異のみが蓄積していくはずだ(性質2)。個体間・種間でのmtDNAの変異がどれだけたまっているのかを比べれば,母方の祖先がわかる,という論理だ。もし変異スピードが一定ならば,生物のいろいろな種で塩基配列の違いを検証し,それがどれだけ異なるか,から生物の分岐年代を簡便に推定するはずだ。このような思考回路は,1962年のエミール・ザッカーケンドルとライナス・ポーリングが最初に提唱した「分子(進化)時計」の概念を念頭にしていたのだろう(30):ゲノムにあたかも時計のように変異が時を刻み,そうした変異から過去を遡れるに違いない。しかも試料が豊富で(性質3),技術的にも比較的容易(性質4)であるという実際上の簡便さもあり,ブラウンらアラン・ウィルソンのグループは1979年に高いmtDNAの変異率が明らかにて,早速それが人類の系統樹作成に役立つものだと考えたようだ(23)。その論文はこう締めくくられている:

                    ... mtDNA will be an extremely useful molecule for evolutionary biologists to use in assessing

                          relationships among species and populations that diverged rather recently---e.g. within the

                          past 5–10 million years. By quantitatively defining the genetic distances among such closely

                          related organisms, one will gain deeper insight into the mechanism of speciation, the process

                          by which new species arise. (23)

                    …ミトコンドリアDNAは進化生物学者にとって,たとえば過去500万年から1億年といった

      比較的最近分岐した種や集団の関係を評価するのに極めて有効な分子になるだろう。このよう

                         に進化的に近い生物間の遺伝的距離を定量的に定めることで,新たな種がどのように出現する

                         のかという過程の機構について,これまでより深い理解を得られるだろう。

そして,この論文の翌年にmtDNAの共通祖先を推定し,8年後の1987年の元日に「ミトコンドリア・イブ」として見出しを飾った論文を発表した。

このように,最初の多地域進化説とアフリカ単一起源説の最初の決着をゲノムがつける背後には,まず,mtDNAを人類の進化の探究に応用する,という新しい発想があった。しかし,その発想は無から出てきたものではなく,すでに分子時計という塩基配列の違いから生物進化を探る概念があったこと,また数多くの研究で明らかになってきたmtDNAのそれに適した性質を知るに至ったことなどがあってはじめてそうした発想が生まれるに至ったのだと推察される。創造の背後にはそれのもととなる発想や知見がある,ということだろうか。

 

 

過去のDNAを解読することはできるのか

さて,アフリカを起源とする人類はその後どのように広まって現在に至るのだろうか。この疑問に答えようとして,世界各地の考古学的証拠だけに頼っていても埒が明かない。その証拠が埋まっていた年代とその形態・解剖学的特徴しか明らかにならず,その後はすべて推測の域を出ないからだ。そうした背景から,1980年代以降,古代のDNAを直接解読することが考え始められた。

過去のDNAが最初に読まれたのは,1984年にドイツのマインツ国立自然史博物館に保管されていた140年前に死んだ絶滅したシマウマ(クアッガ)のmtDNAを229塩基の解読とされる(31,32)。その後すぐにヒトについてもDNAが読まれた。スヴァンテ・ペーボは2,400年前のエジプトのミイラから実に3,400塩基を大腸菌を用いて増幅し,解読したと報告した(33)。ところが,遺伝子を増幅することはそれを定量的に解析する上で必須のステップだが,大腸菌による増幅には時間がかかり,ときおり増幅のミスが起こったりする。この頃の技術ではそれ以上は望めなかった。これは,今後より大規模に研究を進めていくうえではネックになる可能性があった。

 

こうした技術上の問題点は,技術で解決することができればすばらしい。ちょうどそのころ,ポリメラーゼ連鎖反応 (polymerase chain reaction; PCR)という,DNAの特定の領域を数時間で何百万倍にも増幅する画期的な手法が開発された(34)。これにより確実に短時間でDNAを増幅できるようになり,その後7,000年前のヒトの脳(35),数千年前のヒトの骨(36),さらには8千万年前の白亜紀の恐竜の骨(37)など多くの試料からのDNAの増幅に用いられるようになった(38)。技術革新が科学の発展を支えた。いまやPCRは理系の学生の実習でも習うような基本的な生物分子学の技術とされている。

 

ところが,これも非常に教訓的なことなのだが,こうした初期の頃の研究のすべてが正しい結果を導いていたわけではなかったらしい。たとえば,エジプトのミイラから3,400塩基を解読したとするペーボの報告(33)は,実はそのサンプルを後から触った現代人のDNAを読んでいたに過ぎなかっただろう(32),とか,白亜紀の恐竜の骨のものと主張した報告(35)については,「ジュラシック・パーク」に影響されて科学的な動機を欠いていたばかりでなく(39),読まれたとされるDNAもなんからのコンタミネーション(汚染)かPCRのミスだとされた(40)。こうした誤りが明るみに出るにつれ,どうやらこの界隈の科学者は2つの派閥に激しく分断されるようになっていったらしい。過去のDNAを正確に抽出・解析することができるとする派閥と,そうしたことは極めて難しいだろうとする派閥である(41)。

 

DNAは無敵ではなかった

ではなぜこうした「誤り」が明らかになったのだろうか。別に過去のDNA解析に対して悲観的な派閥が理由なくそのように考えていたわけではなかった。過去のDNAを読む,ということがいかに難しいかは当初それほど明らかになっていなかった。しかし,徐々に考えていたほどには簡単なことではないらしいぞと,分かってきた(32)。すなわち,DNAは劣化する。したがって古代のDNAが数千塩基対も読めるわけがない,ということだ。

 

DNAは生物が必要とするすべての情報を整えたライブラリー(貯蔵庫)である。実際,世代から世代へと複製を通じて非常に正確な遺伝情報を伝達することは,DNAがいかに安定かを示していると言える。ところが実際には,このDNA—デオキシリボースとリン酸,塩基から構成されるデオキシリボヌクレオチド―は,時間とともに劣化してしまう。ヒトの場合でも放射線や加齢などによってDNAの「劣化」が進行するが,古代人の化石のような環境中におかれたものでは,死んだ細胞内のDNA分解酵素や微生物による分解にくわえ,温度,湿度,酸性度,塩分といった数多くの要因がDNAの劣化に関わってくる(42)。完全な凍結保存といった非常に理想的な環境であれば数百万年以上(43)(2億5千年前のDNAすら!(44))DNAが「良い状態で」保たれるようだが,時間とともにいくつかの反応を経て,DNAは数十から数百塩基にまで断片化し,PCRでの増幅を誤らせてしまうような塩基の欠損がおこってしまう(42)。したがって,誰が触っているかもわからない,どんな反応が起こっているかもわからない環境中からDNAをとってきて,それを増幅して解析することは極めて難しいことなのだ。とくにゲノムがほとんど共通な生物同士―ホモ・サピエンスとホモ・ネアンデルタールなど―を,現存するごく僅かな試料から比較せねばならないことの難易度が高いことは容易に想像がつく。

 

ミトコンドリアDNAも無敵ではなかった

1988年にPCRを用いた約7,000年前のヒトの脳から抽出したmtDNAの解析に成功したペーボは,PCRで誤って現代人DNAが増幅されてしまうという懸念を巧みに回避しようとしていた。1997年には増幅の起点となるプライマーを区別し, 3–30万年前のネアンデルタール人のmtDNAの379塩基をPCRで増幅し決定することに成功していたのだ(45)。この報告では現生人類の最後の共通祖先はネアンデルタール人との最後の共通祖先より4倍ほど時間がくだった頃だろう,さらにはネアンデルタール人と現生人類の交雑はなかっただろう,と推定している。しかし,同じ頃問題になっていたのは,もはやミトコンドリアのDNAだけを解析していても人類の起源には迫れないのではないかという疑念だった。MtDNAに当初想定していたほどの過去への道標と成るような性質がないのではないか,ということだった。たとえば,

 

  1. mtDNAが中立的な進化を遂げてはいない可能性がある(14):「中立的な(neutral)」でない変化,というのは,ある遺伝子にその変異が起こったときに,それが機能的に好ましいものならばその変異を持つ遺伝子が増えていき,最終的にはその変異が集団の多くを占めるようになる,ということだ。逆に,中立的な変化であれば,機能に影響しないから,現存する変異はすべてランダムな突然変異の結果であって,それはおそらく時間に比例すると考えられる。中立的な変化でなく,正の選択を受けるような変化であれば,たとえ現在の集団間・個体間での変異の違いをみて系統樹を作成し,共通祖先をたどったつもりになっても,それはあくまでその「変異」の共通祖先に過ぎず,集団の共通祖先はもっと別のところにある可能性が出てきてしまう。当初はmtDNAは呼吸という生物学的に非常に重要な役割を果たしているので,そこからあえてその機能を変えるような変異はおこらないのではないかと考えられていたようだが(23),そうでもないらしいという証拠が出てきていた(20)。

  2. MtDNAは集団間での遺伝的なやり取りの影響が非常に大きい:mtDNAは母系遺伝である。したがって交雑の結果別の集団からの女性が遺伝子を残すことになった場合,今あるmtDNAの起源はその集団のmtDNAの起源ではなく,交雑として入ってきた女性由来にすぎないのではないか(46)。

など。さらにmtDNAの複製や変異スピードについても多くの研究がなされ,それらは想定していた以上の複雑な制御を受けていることが明らかになってきていた(20)。

そこで注目が集まったのが核のDNAだった。ミトコンドリアのDNAに比べてコピー数は数千分の1程度にしかならない(1コピーしかない!)ものの,mtDNAが16,569塩基対なのにたいして,核ゲノムはおよそ33億塩基対である。MtDNAと異なり,父親と母親の両方から受け継ぎ,それらの一部がときに組み換えをおこし,遺伝子の多様性をもたらす(47)。そうした長い塩基のほうが,mtDNAの短い塩基配列のどこかの塩基よりも,その変異は「中立的」で,それをたどったほうがより正確に人類の期限に迫れるのではないか。なんといっても,情報は多いほうがいい。

 

ネックとなるのは,その長い配列をいかにして読んでいくかだ。これまでの短い部位をそれぞれ解読し,それらを重ね合わせていってなんとか数百塩基を読むこうした初期の頃の「ショットガン・シークエンシング」は時間も費用も効率的ではなかった(32)。1990–2000年代のことである。ここにおいても,数十年前に遺伝子の増幅に関する困難と同様な技術的な困難が再び頭をもたげ始めていた。

 

 

技術と発想の両輪を回す

そうしたなか2005年に登場したのが次世代シーケンサー(next generation sequencing; NGS, high-throughput sequencingともいう)である(48)。切断した短いDNA断片をそれぞれ「解読」し,コンピューター上でその結果をつなぎ合わせてもとの長大なDNAがどんな配列だったかを再構築する,という基本的原理は同じだった。しかし,NGSでは数千から数億の塩基配列を同時並列的に解読するができるようになった。ゲノムの解析を「ハイスループット」に,すなわち自動で高速に大量に行えるまさに新たなミレニアムの壮大な科学の幕開けを象徴するかのような「次世代の」マシーンだった。同じ頃,研究者らはおよそ4万年前のホラアナグマのDNAを解読することに成功し(49),環境中の目的物以外の「ノイズ」が多く,さらにはそのものすら劣化したDNAから有意義な解析をする技術(メタゲノミクス)が徐々に確立されてきていた。そうして発想・技術の進歩の両輪が回り始めた。2010年には4,000年前の人類(50),ネアンデルタール人(51),デニソバ人(52)の全ゲノム解析が実現するに至った。その後の数多くの過去と現在のホモ・サピエンス,ネアンデルタール人,デニソバ人などのゲノム研究で,これらのヒト族は50–70万年前に分岐し,解剖学的な証拠から現生人類は過去数十万年前にそのうち1系統から出現したこと,さらに5–7万年前にアフリカを出てヨーロッパ,アジアに向けて広がり,オセアニア,東アジア,南北アメリカに広がっていったことがわかってきた(2)。さらに40万年前より以前にさらに分岐していた(53,54)ネアンデルタール人とデニソバ人とは,何度かの交雑があり(2,55),現在のアフリカ以外のヒトはその遺伝子のおよそ2%をネアンデルタール人から(56,57),メラネシア人やオセアニアの人々を含む一部の地域の人々には3–6%のデニソバ人の遺伝子も入っていることもわかっており(52,53),それらの遺伝子がどのような影響を私たちに与えているのかについての研究も数多くなされてきている(2,58)。

星の光はどこだ

こうして振り返ってみて,この「人類の歴史の研究の歴史」から何を学ぶことができるだろうか。

  1. まず,その歴史の中でいくつかの思想の対立や変化があった:多地域進化説とアフリカ単一起源説の対立に始まり,mtDNAだけではなく,核のDNAも解析すべきだという変化,さらにそもそも過去の・しかも環境中の汚染されたゲノムを正確に読むことなど不可能ではないかという意見との対立

  2. それらを乗り越えるためには,いくつかの技術的革新が重要だった:すなわち,PCRや次世代シーケンサーがそれにあたる。PCRは簡便にかつ大量に目的のDNAを複製することを可能にし,次世代シーケンサーは全ゲノムを解析するほどの非常に膨大なゲノムデータの解読を可能にした

  3. そして,そうした対立や変化を乗り越え,技術的革新を生み出し応用していくには,それぞれの段階での発想の転換・試行錯誤・紆余曲折があったが,それらの成功は常に過去に負っていた:mtDNAで人類の起源に迫ろう発想,というのは無からいきなり生まれでてきた発想ではなく,それまでに分子時計の概念や,ミトコンドリアやそのDNAの性質に関する数多くのデータが揃ってきていたからだった。また,mtDNAだけではなく核DNAを読むべきだとわかったのも,mtDNA,核DNAの性質それぞれが明らかになってきていたことがある。さらに,劣化の進んだ環境中の過去のDNAを解読するのも,急にそれが可能になったわけではなく,数多くのコンタミネーションや増幅ミスなどがあったうえで,その原因を探り,改善していくことができたから可能になったことだった
     

なんといっても,現在の人類の起源についての莫大な知は,こうした数多くのステップの積み重なりだと感じる。

これらのことは,なにか新たな価値を創造しようとするときに教訓となるだろう。新しい発想や価値はなにもないところから生まれるわけではなく,つねに過去を学び,それを変えてみたり,別の場面で採用してみたり,融合してみたりすることで生まれる,ということだろう(59)。そのたびにまた新たな疑問が生じてくる。

我々のAMS学生プロジェクトの活動も様々なバックグラウンドを持つ学生が集まり,自分とお互いを研究し,試行錯誤を通じて新たな価値を生み出す場が多くあることを期待している。多様性は常に可能性を生み出す。星の光は常にたくさんあったほうがいい。

 

 

 

増田康隆

 

謝辞

人類の歴史の研究の歴史がそうであったように,このレポートを作成するという発想のもととなる発想があります。それは2019年12月の西川伸一先生の講義に非常に多くを負っています。ありがとうございます。無論,このレポートの内容について,その勘違いや誤りはすべて,不勉強ゆえの筆者の責任です。フィードバックいただけましたら幸いです。

参考文献と註

1. Stringer, Chris B., and Peter Andrews. "Genetic and fossil evidence for the origin of modern humans." Science 239.4845 (1988): 1263-1268.

2. Nielsen, Rasmus, et al. "Tracing the peopling of the world through genomics." Nature 541.7637 (2017): 302-310.

3. Cann, Rebecca L., Mark Stoneking, and Allan C. Wilson. "Mitochondrial DNA and human evolution." Nature 325.6099 (1987): 31-36.

4. Wainscoat, Jim. "Out of the garden of Eden." Nature 325.6099 (1987): 13-13.

5. Lewin, Roger. "The unmasking of mitochondrial Eve." Science 238.4823 (1987): 24-26.

6. キャンらは得られたミトコンドリアDNA (mtDNA)を制限酵素というDNAを特定の遺伝子配列の場所で切断する酵素(しばしばハサミに例えられる)12種類で切断した。人それぞれ独自の遺伝子配列を持つため,そうした制限酵素での「切られ」方が人それぞれ異なる。その切られ方がある人と別の人でどれほど違うかを指標に,その人の間の遺伝的距離を計算した。かくして,その遺伝的距離が遠い,すなわち,その2人の共通祖先は遠い,というわけである。確立された手法ではあるが,直接遺伝子配列を読むのに比べて欲しい結果に対する精度は低い。

7. 彼らが「アフリカ人」としてカウントしていた147人のうちの20人で,実際にアフリカ人だったのは2人だけで,残りの18人は黒人のアフリカ系アメリカ人 (Black Americans)だった。論文中で彼らはこのことについて,「この18人のうち12人からはサハラ以南のアフリカ人にしか見られない制限酵素切断位置が見られた」と述べるにとどまっていた。したがって,この「アフリカ人」のmtDNAは必ずしもアフリカ人の特徴を表していない可能性がある。

8. 彼の主張の主たる根拠は,制限酵素切断位置から作成した系統樹の最初の分岐の一方が,アフリカ人のみからなる枝だった,というだけだった。

9. Vigilant, Linda, et al. "African populations and the evolution of human mitochondrial DNA." Science 253.5027 (1991): 1503-1507.

10. すべての塩基の変異から共通祖先までたどるのに,もっとも「節約的に」,すなわち途中の塩基置換の回数が最も少なくなるように系統を構築する方法。

11. Templeton, Alan R., et al. "Human origins and analysis of mitochondrial DNA sequences." Science 255.5045 (1992): 737-739.

12. Maddison, David R., Maryellen Ruvolovo, and David L. Swofford. "Geographic origins of human mitochondrial DNA: phylogenetic evidence from control region sequences." Systematic Biology 41.1 (1992): 111-124.

13. Barinaga, Marcia. ""African Eve" backers beat a retreat." Science 255.5045 (1992): 686-688.

14. Goldman, N., and N. H. Barton. "Genetics and geography." Nature 357.6378 (1992): 440-441.1

15. Penny, David, et al. "Improved analyses of human mtDNA sequences support a recent African origin for Homo sapiens." Molecular Biology and Evolution 12.5 (1995): 863-882.

16. Bustamante, Carlos D., and Brenna M. Henn. "Shadows of early migrations." Nature 468.7327 (2010): 1044-1045.

17. Birney, Ewan, and Jonathan K. Pritchard. "Archaic humans: four makes a party." Nature 505.7481 (2014): 32.

18. ここで挙げる3つ以外にも理由はあるだろう。

19. Brown, Wesley M. "Polymorphism in mitochondrial DNA of humans as revealed by restriction endonuclease analysis." Proceedings of the National Academy of Sciences 77.6 (1980): 3605-3609.

20. Galtier, Nabholz, et al. "Mitochondrial DNA as a marker of molecular diversity: a reappraisal." Molecular Ecology 18.22 (2009): 4541-4550.

21. Giles, Richard E., et al. "Maternal inheritance of human mitochondrial DNA." Proceedings of the National academy of Sciences 77.11 (1980): 6715-6719.

22. Olivo, Paul D., et al. "Nucleotide sequence evidence for rapid genotypic shifts in the bovine mitochondrial DNA D-loop." Nature 306.5941 (1983): 400-402.

23. Brown, Wesley M., Matthew George, and Allan C. Wilson. "Rapid evolution of animal mitochondrial DNA." Proceedings of the National Academy of Sciences 76.4 (1979): 1967-1971.

24. Michaels, George S., William W. Hauswirth, and Philip J. Laipis. "Mitochondrial DNA copy number in bovine oocytes and somatic cells." Developmental Biology 94.1 (1982): 246-251.

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30. 分子時計の概念の変遷については,たとえば,Kumar, Sudhir. "Molecular clocks: four decades of evolution." Nature Reviews Genetics 6.8 (2005): 654-662.

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36. Hagelberg, Erika, Bryan Sykes, and Robert Hedges. "Ancient bone DNA amplified." Nature 342.6249 (1989): 485-485. 37. Weyand, N. J., and Mark Bunnell. "DNA sequence from Cretaceous period bone fragments." Science 266.5188 (1994): 1229-1232.

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39. Lindahl, Tomas. "Facts and artifacts of ancient DNA." Cell 90.1 (1997): 1-3.

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41. Marchant, Jo. "Curse of the Phaaroah's DNA." Nature 472.7344 (2011): 404.

42. Dabney, Jesse, Matthias Meyer, and Svante Pääbo. "Ancient DNA damage." Cold Spring Harbor Perspectives in Biology 5.7 (2013): a012567.

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56. Vernot, Benjamin, and Joshua M. Akey. "Complex history of admixture between modern humans and Neandertals." The American Journal of Human Genetics 96.3 (2015): 448-453.

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58. このなかの一連の研究での「古代人ゲノム解読による古人類学への先駆的貢献」に対し,スヴァンテ・ペーボ博士は折しも2020年2月にJapan Prizeを受賞している(2020年4月25日時点のリンク):

https://www.japanprize.jp/index.html?lng=ja

59. Eagleman, David, and Anthony Brandt. The runaway species: How human creativity remakes the world. Canongate, 2017.

60. Zuckerkandl, E. & Pauling, L. in Horizons in Biochemistry (eds Kasha, M. & Pullman, B.) 189–225 (Academic Press, New York, 1962).

61. Zuckerkandl, Emile, and Linus. "Evolutionary divergence and convergence in proteins." Evolving Genes and Proteins. Academic Press, 1965. 97-166.

62 National Human Genome Research Institute, Human Genome Project Timeline of Events. (2020年4月25日時点のリンク):

https://www.genome.gov/human-genome-project/Timeline-of-Events

63. Hoss, Matthias, Svante Paabo, and N. K. Vereshchagin. "Mammoth DNA sequences." Nature 370.6488 (1994): 333-333.

64. Hagelberg, Erika, et al. "DNA from ancient mammoth bones." Nature 370.6488 (1994): 333-334.

65. Hammer, Michael F. "A recent common ancestry for human Y chromosomes." Nature 378.6555 (1995): 376-378.

66. Hammer, Michael F., and Stephen L. Zegura. "The role of the Y chromosome in human evolutionary studies." Evolutionary Anthropology: Issues, News, and Reviews 5.4 (1996): 116-134.

67. Poinar, Hendrik N., et al. "Metagenomics to paleogenomics: large-scale sequencing of mammoth DNA." Science 311.5759 (2006): 392-394.

68. Gokhman, David, et al. "Reconstructing denisovan anatomy using DNA methylation maps." Cell 179.1 (2019): 180-192.

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