​PREHISTORY

AMS学生プロジェクトの設立経緯を時系列に沿って記録しています

              京大学医学部では,毎年5月の学園祭,「五月祭」で,4年生が自分たちで決めた企

     画展示を行う伝統があります。さて来年の自分たちの代の五月祭の企画展示では何を

     しようか,2017年秋の休み時間の3年生が集まった企画者会議での一言,「芸術が医学でどれほど分かっているのか調べてみたら面白そうじゃない?」。芸術は,いかにも科学の手が入りにくそうな分野だということを知っていた上での提案でした。しかし分からないこと・新しいことに貪欲な友人たちの反応はすぐさま返ってきました。「芸術?今まで一度もないし,面白そうだね,是非やろう」。そうして興味のある何人かの友人らとともに人間の絵画の認知や感動のメカニズムについての医学的研究を本で調べ,論文で学び,取材をして,翌年の5月にその成果を発表したのが我々のはじまりです。

From

Autumn

of

2017

to

Summer

of 

2018

​学園祭 発表  『芸術を医学しよう』

2018.5.19,20 東京大学本郷キャンパス

 

人間が絵画を知覚し感動するメカニズムについて調べ、ポスターで発表しました。

1_edited.jpg

「芸術を医学しよう」

芸術を理解するメカニズムを理解したい,そんなとき役に立つのが医学です。葛飾北斎の鮮やかな色の浮世絵とミケランジェロの鉛筆のみを用いた数々のデッサンが同じ芸術とみなされ,何らかの感動を生み出すとするならば,それはなぜなのでしょうか?肖像画であれ,風景画であれ,もしくは絵の具を使っていても,線画でも,われわれは目を通してそれを認識します。そこから私達の身体―とりわけ脳―のなかで芸術の旅が始まるのです。有史以来のほとんどの期間,芸術の理解はたんなる想像や妄想の域を出ていませんでした。しかし,ベートーヴェンの交響曲第9番とジョン・ケージの「4分33秒」(4分33秒間ピアノの前に座る「音楽」です)とに共通する「感動」を詳らかにすることまで求めるのでなければ,現代の医学研究でもある程度,芸術を説明することができるはずです。

 今回の企画では,我々が芸術を認識するプロセス―特に絵画が身体に飛び込んだ瞬間から感動を生み出すまで―を簡単な実験やクイズを通してみなさんと探っていきます。いくつか例を出せば,ダ・ヴィンチが遠近法を使うのも,モネが陰影や色使いにこだわるのも,多くの画家がこぞって肖像画を描くのも,そしてなぜか子供のお絵かきが黒い輪郭から始まるのも,医学で説明できる部分が多くあります。こうしたことが理解できれば,感動する,というひどく抽象的な言葉は,脳でどのような処理が行われているのかという具体的な問題に解き放たれるわけです。さらには,アートを実際の医療に取り入れている例も紹介したいと思います。

 取材先:ストレスケア東京上野駅前クリニック 細川大雅先生とスタッフの皆さま               

                                                                                                     (2018年五月祭医学部企画パンフレットより)

 

From

Spring

to

Summer

of 

2018

折しも,同年の夏休みの終わりにもう一つ,学生が講師の先生方へのアポ取りから会場のマイクの設定まですべてを準備する集中講義がありました。もつは友人というもので,その統括をしていた同級生との帰り道,今年の講義のテーマは何にしようかというのでふと五月祭のことを思い出して提案したところ,彼も興味があったらしく意気投合し,ぜひとも芸術と医学,このテーマで講義を実現しよう,というに至りました。実際にこの講義を実現する過程も数多くの困難がありましたが,なんとか実現にこぎつけました。結局,「医学と芸術の接点」をテーマに第一線で研究をなさっている先生方を全国からお招きして開催することができました。特に学際的な価値のある講義とのことから,コーディネーターの中島淳先生(東京大学医学部医学系研究科 呼吸器外科教授)らのご尽力で,異例ながら学外の学生にも開かれた講義にすることができました。

​集中講義

2018.8.29  東京大学本郷キャンパス

 

統合講義は,2004 年度より行われている東京大学医学部医学科伝統の特別講義です。各日が学生の要望をもとに設定されたテーマについての集中講義の形を取り、最先端の知見に触れ医学の多面的な理解を図ります。準備・運営は学生が主体となり行っております。病棟実習を始める前に基礎医学・臨床医学・社会医学 を座学中心に学んでいる医学科 3, 4 年生 (M1, M2) の必修講義となっておりますが、その卓越した講義は広く共有されることが望ましいという考えのもと、医学部の講義で唯一本学関係者(他学部学生・大学院生・ 教職員)全てに開かれた講義となっております。3日目は、以下の通りで行います。
 

  「医学と芸術の接点」

   有史以来のほとんどの間、美の定義や芸術の価値についての議論は 個々人の想    像や妄想の域を出てこなかった。しかし、最近の医学研究により、何を美しい      と感じるか、芸術をどのように我々は認知するのか、そして芸術は我々にどの      ような影響を与えるのかが明らかになりつつある。本講義では、先駆的な芸術      の医学的研究をされている先生方からご講演いただき、両分野の学問的融合の      現在を知り、 今後を展望する。

     川畑秀明先生・慶應義塾大学教授

     田中昌司先生・上智大学教授

     佐藤正之先生・三重大学准教授

     市江雅芳先生・東北大学教授

     杉原厚吉先生・明治大学教授

     伊藤浩介先生・新潟大学助教

 

(2018年度東京大学医学部 統合講義シラバスより)

スクリーンショット 2020-04-23 1.40.50.png

異例,というのは時にはよい結果を生み出すもので,この講義の後の懇親会には,講師の先生方や医学生のみならず,数多くの芸術大学の興味を持った学生が集まりました。集まっていただいたことや先生方への感謝をのべた後に,その前から少しは意識していたことですが,せっかくなので,と思い切って発言してみました。「これを終わりではなく,始まりにしたい」。かくして医学を志す学生と芸術を志す学生が共に学問的に真剣に語り合い,学び,創造する場を創り出すことを目指して,何回かの自己紹介と発表を兼ねた小さなミーティング(場所取りには本当に苦労させられる!)を開いていくことになりました。毎回それぞれの問題提起と様々な視点が錯綜し,非常に刺激的なものでしたが,思えばそのような多層的・相互的・自主的な学問の場というのはあまり他にないように感じていました。いわゆる(!)「インカレサークル」ではないのです。そうして月に1回程度のミーティングを繰り返していき,初代のホームページなども作成するまでになりました。

From

Summer

of

2018

to

Spring

of 

2019

初代WEBサイト作成

互いを生かし合いながら、様々な作品やイベントを一から創造していく喜びは、私たちの活動の原点です。

この初代Webサイトは、園田健二さん(東京藝術大学美術学部)の繊細な仕事と、メンバーの希望に満ちた思いが結実した、ひときわ思い入れのある作品です。

From

Spring

of 

2019

to ...

グループの名前は,ちょうど同じ頃に東京藝術大学でも大学としての同様の取り組みを始動させるとのことから,先生方と連携して我々のほうはそちらの名前の後に「学生プロジェクト」をつけることにしました。園田健二さんのすばらしい初代サイト,や山口聖奈さん(東京藝術大学美術学部)のロゴを後押しに,活動やメンバーも徐々に増加していきました。これらに対応するため,のちにサイトの方は共同編集が可能なものへと変更することになりました。このようなことがありつつ,2019年4月に須田年生先生(シンガポール国立大学教授)をお呼びした講義の前に,Arts Meet Science学生プロジェクトとして本格的に活動するに至りました。これが私たちの設立経緯です。


途中,数多くの友人や先生方のお世話になったことと,そうした全ての方々への感謝を申し添えておきます。