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AMSS Memoirs

2020. 9. 28

『なぜ脳はアートがわかるのか』を読む(4)

  カンデル輪読会 第4回で扱った議題や行われた議論,それを踏まえた考察をまとめる。

​『なぜ脳はアートがわかるのか』-第5章

第5章では、芸術家の還元主義的アプローチを近代アーティストであるターナー、モネ、シェーンベルク、カンデンスキーの作品を通してプロジェクトの参加者と考察していった。

著者であるカンデルは近代のアーティストが還元主義を用いて作品制作を行う際、対象は描かれるモチーフであり、目に映るモチーフをフォルム、線、光、色に還元しそれらを取捨選択して表現することであると述べていることを確認した。

ターナーの作品はモチーフをフォルムと線を捨てて光りと色に焦点を当てて制作している、そして写真の誕生以前からモチーフを還元化し抽象的表現に着目している点がこの作家の特出すべき点である。

モネの作品を通してカンデルは純色を用い、輪郭をぼかし、イメージを平面化していることが抽象芸術における重要な要素であると述べている。そして筆者は抽象芸術の難解なところに鑑賞者に託す部分が大きくなっているとも述べている、この点において現代の日本人の感覚とはずれがあるのではないかと話し合いの中で意見があった。つまり難解な物事に対しての興味が現代の日本人には欠けてきているため抽象芸術に対して消極的思考になるのではないかという考えである。

シェーンベルクは音楽家でもあり、真の抽象画を生み出した最初の作家であると筆者は述べている。そしてカンディンスキーもまたシェーンベルクの抽象音楽に影響を受けて作品を制作した人物でありこのことから抽象芸術と音楽には深い関係性があることは間違いない。話し合いの中でも音楽は絵画に比べ抽象度が高い芸術であるという意見があがった。また、音楽は実生活と連想されやすいものを使って鑑賞者の記憶を呼び起こすという点で、絵画とも共通点があるように感じる、との意見もあがり、絵画と音楽の関係性の深さが再確認された。

compositionV.jpg

​ワシリー・カンディンスキー『コンポジションV』(1911)

キャンバス右上にはトランペットを奏でる天使が描かれているが、キャンバス内を左右に通る黒の強い線は、この天使がトランペットで奏でた「音」を描いたとされる。

キャンバス内には他にも何人かの天使と「音」が多様な太さと方向で描かれており、作品内の「音」の無限性を表現した作品として捉えることができる。

原澤 亨輔,司馬 康

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