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緩和ケア科における音楽療法 - 音楽療法の方法と実際

2023年12月06日  講義  

東京・広尾の日本赤十字社医療センター(以下、日赤医療センター)内にて、「緩和ケア科における音楽療法 - 音楽療法の方法と実際」と題し、2人の先生方からご講演いただきました。

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日赤医療センター緩和ケア科部長の高橋尚子先生は、終末期医療における緩和ケア科の役割と、音楽療法をどのように取り入れるかについてご講演されました。終末期医療では、患者さまが残りの人生をどのように過ごすかを医療者が共に考えることが大切ですが、音楽には過去の思い出を呼び起こす力があるため、言葉だけでは掘り起こせない記憶を思い出し、何を大切にして過ごせばよいかが分かることがあるというお話が印象的でした。 

 

 日本ハープセラピー協会代表で、日赤医療センターで音楽療法士をされている神藤雅子先生は、ハープ・セラピーについて、豊富なご経験を交えてご講演されました。ハープ・セラピーは音楽療法の一種であるとともに、通常の音楽療法とは一線を画しており、症状の改善を目的としていません。目の前の1人の患者さまの表情や動作、環境に合わせてハープを演奏し、患者さまはハープの音を聞く必要がありません。ハープの音は振動として伝わり、頭ではなく体にマッサージのように働きかける(「音浴」)ため、昏睡状態や認知症の方に適しています。実際の事例として、呼吸や血圧の安定、鎮痛効果、催眠効果のほか、ハープの音色に包まれて安らかな最期を迎えられたケースなどをご紹介いただき、「なぜかはわからないけれども」効果をもたらすというお話が刺激的でした。 

最後にはハープを生演奏してくださいました。私を含め、参加者の中に催眠効果を感じた方が多く、かなりの音量で演奏されていたにもかかわらず不思議だと感じました。音楽で心を揺さぶられる経験は多くの方がされていると思いますが、音楽で「体」を揺さぶられるという貴重な経験ができました。 

 

 最後になりますが、お忙しい中、大変貴重なお話を聞かせてくださった高橋尚子先生、神藤雅子先生、このような機会を作ってくださった日本赤十字社医療センター長の中島淳先生に、心より感謝申し上げます。 

 

 東京大学医学部医学科3年 佐々木洸大

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